『地球防衛隊のプロップガンに燃える!〜究極のトイガン遊び』                                                
                                 梶研吾

いわゆる“銀玉鉄砲”時代からのトイガン好きには違いないのだが、コレクションの志向はあまりなく(いや、正直に告白すれば、もはや本やらDVDやらで占領され尽くした事務所にも自宅にも、トイガンをディスプレイできるようなスペースがなく、泣く泣く欲望を抑えているといったほうが正しい)、もっぱら映画に登場する多種多様な銃を見ては、その扱い方や、発射音並びに着弾音のこだわりなどに、いちいち感心したり怒ったりの今日この頃である。

というわけで……。

過日、伝統あるウルトラマンシリーズの中でも、多角的な意味で、かなり画期的だった特撮ドラマ『ウルトラマンマックス』を監督する機会に恵まれ、その劇中、地球防衛隊のDASH(ダッシュ)が使用する近未来銃の演出には、自分なりにかなりこだわった。
DASHの隊員達は、全員が、“ダッシュライザー”という銃を携行しており、これは3種類のシリンダーを変換装填することで、レーザーガン、フリーザーガン、スタンガンとモードチェンジできる、いわばウルトラリボルバーである。

特に、特撮系のドラマで使用されるプロップガンは、後に玩具として発売される宿命を背負っているため、劇中でもしっかりと見せておく必要がある。そのため、現場では常に“アップ用”と“アクション用”の二種類のガンが準備され、シーンごとに使い分けながら撮影を進めていく。(もちろん、“アクション用”だからといって適当に造られているわけではなく、素材が異なるだけで、ディティールまで“アップ用”のものと、ほとんど違いはない)

また、弾丸を発射するタイプの銃ではないため(後の合成作業でビームが描かれるわけだ)、現場でも発火や発砲音はなく、それだけに役者さん達の芝居に比重がかかってくる。

さて……。

第8話『ダッシュ壊滅?!』では、ヒジカタ隊長役の宍戸開氏に、ダッシュライザーのシリンダー交換の際、普通にやるのではなく、カッコよく画面手前に空になったシリンダーを飛ばして“イジェクト”してもらいたい旨、リクエストを出した。
すると、さすがは“エースの錠”の御子息、本来は飛ぶはずのないシリンダーを、実に巧みな手さばきで、カメラ手前へと飛ばして見せてくれた。
次いで、主人公のトウマ・カイト役の青山草太君には、敵に銃を擬したまま、シューズから火花が散るほどスライドして、射撃に繋げるという演出をつけた。
青山君もシューティングの呑み込みは抜群だったが、彼の芝居プラス、合成とCGを使用して、さらなる迫力を出した。(ちなみに、この回では、プレデターもどきの凶悪な異星怪獣を倒すため、初めて第4番目の特殊シリンダーをカイトに使用させたりもしている)

第32話『エリー破壊指令』では、DASH随一の射撃の名手であるコバ・ケンジロウが主役の回で、ガンアクションシーンの連続となり、タイトなスケジュールの中、撮影はあまりにも過酷だったが、撮りながら実に楽しい一本でもあった。
コバ隊員を演じる小川信行君には、射撃に手馴れているでことを印象づけるため、きわめて短い時間の中ではあったが、眼線の使い方、片手でのシリンダー装填方法、撃ち方とリアクションその他、細々とリクエストを入れた。
特筆すべきは、撃つほうよりも、むしろ撃たれる側のリアクション芝居で、これが上手くないと、画がキマらない。
その点、この回のゲストの小田井涼平君やスタントチームの面々は、撃たれる側のリアクションがよくわかっていて、ひじょうに助けられた。
また、スタッフ諸氏が喜んだのが、手持ちカメラ長回しによるガンアクションシーンで、これは何が元ネタかといえば、故・松田優作氏の「遊戯シリーズ」であり、皆がいかにあの映画のファンだったかが判明した次第。

ちなみに、DASHの基地内に設定した“ヴァーチャルシューティングレンジ”は、様々な敵をリアルに視覚化でき、実戦そのものの訓練が可能で、後に某警察関係者から、「本当にあのようなシステムを作りたい」と言われたりもした。

とまれ、特撮ドラマの中で、近未来のガンを使っての撮影において、何が一番感慨深いかというと……。

それは、DASHをはじめとする地球防衛軍の隊員達が、決して人間には銃口を向けないことであり、銃の使用については、人類を襲う凶悪無比の怪獣や異星人に対してのみに、完全限定されていることだ。
同時に、登場する近未来ガンは、どれもこれも設定上はきわめて高性能で、凄まじい破壊力を秘めているが、そのデザインは子供達に愛されるよう、美しく、カッコよく、あくまでもセイフティである。

そういう意味では、“究極のトイガン遊び”を、自分は撮影という名のもとにやらせてもらったのかもしれない。                                                                                          元のページにもどる