海外通信達人への道(総集編)

月刊モバイルプレス(技術評論社)99年4月号より


数年前までは、海外まで行って通信をする必要性が今日に比べて少なかったこともあり、通信ノウハウや情報が少なく、海外からの通信は非常に難しとされ敷居が高くなっていました。
しかし現在は昔と比べて大きく状況が変わってきました。インターネットの普及に伴い、あちらこちらで電子メールが活躍し、仕事のスタイルが大きく変わってきこともその一つの例です。それこそ24時間、どこにいてもメールが届く様になり、海外だからメールが受信できません、送信できませんなどと悠長なことを言っていられる様な状況ではなくなりつつあります。
これまで数回にわたり海外からの通信について考えてきました。今回は総集編と言うことでおさらいをしてみたいと思います。

必要なアイテム

通信を行う場合、必要な機材やアクセサリーが一つでも不足すると致命的な状況に陥ります。それでも日本にいれば、近くの店で購入したり、友人に借りたりすることで何とかその場をしのぐことができる期待もありますが、海外の場合は容易に物を調達することはできません。
その一方で、あまり持ち物に神経質になると、それこそあれもこれも持っていかなければならないという状況になり、荷物がどんどん増えていってしまいます。
では最低限、なにを揃えればいいのでしょうか?筆者の経験上、通信端末、モデム、モジュラーケーブルと言った普段使っている通信用機材の他に、次のアクセサリーを必ず持参することをお勧めします。それ以外の物については、保険という意味で余裕があれば持参する。あるいは、これ以上に必要な状況になったら海外での通信をあきらめる。と言った割り切りが必要だと思います。

電源延長ケーブル

最近ではホテルの部屋に通信用のデータポートが設置されているケースが増えていますが、モジュラージャックの近くに電源コンセントがあるとは限りません。ほとんどの場合、部屋には1つ、あるいは2つぐらいのコンセントしかなく、それらは清掃用に用意されているだけで、決してモバイラーの都合などは考慮されていません。そのため、通信端末を離れたコンセントとつなぐ必要があり、電源延長ケーブルは必須です。
また、延長ケーブルには2つ以上のコンセントが用意されたタイプがお勧めです。これだと、通信端末をつないでいても、もう一方のコンセントに日本から持ち込んだ電気製品を接続でき便利です。

コンセント変換コネクター

コンセントの形状は国ごとに異なり、電源確保のためには変換コネクターは必須です。以前は、いろいろな変換コネクターを準備しなければならず、訪問する国のコンセント形状を調べて準備する必要があり不便でした。
ところがそんな不満を解消してくれる便利なコネクターがあります。それがサスコムです。これ一つで世界中のほとんどの国でコンセントの変換に戸惑うことはないと思います。

トランス(変圧器)

最近はユニバーサルと言われる100V〜240Vまで対応しているACアダプターを備えた製品が増えてきました。ところが、製品によっては100Vにしか対応していない物もまだ多く売られています。このような機材を海外で使う場合は必ずトランスを用意する必要があります。トランスは、デパートなどの旅行用品売場などで入手することができます。

モジュラー変換コネクター

電源コンセントの形状が国ごとに異なるように、モジュラージャックの形状も国によって異なります。そのために変換コネクターが必要になりますが、いくつものタイプの変換コネクターを購入する必要がないWorld Connectと言った便利な商品も売られています。
ところが、日本と同じRJ11タイプのコネクターを有した電話機を最近では多くのホテルで見受けることができ、筆者の場合は変換コネクターを持参しなくなりました。

接続方法

海外から通信を行う場合に、いちいち日本の国内にあるアクセスポイントへつないでいたのでは通信費がかかりすぎます。そこでローミングサービスの利用が便利です。
ローミングとは接続代理サービスの事で、このサービスを使えばわざわざ海外から日本へ高い国際回線を使って通信することなく、滞在している場所にもっとも近いアクセスポイントへつなぐぎ、日本で使っているIDで通信ができるので大変便利です。
特にiPASSGRIC等が世界各国でローミングサービスを提供している会社として有名で、これらの会社と提携している日本の国内のプロバイダーユーザーの場合、滞在先で登録されているISPのアクセスポイントから直接インターネット接続が可能です

環境整備

パソコンに海外での通信環境を設定する場合、コントロールパネル内のモデムの設定で、ダイアルのプロパティから、国・地域、市外局番、外線発信番号などを変更したり外線発信番号を変えたりと、日本で通信を行う時以上に複雑な設定変更が求められます。
また、場所によって外線発信番号などが異なるときなどもあり、その場合はいちいち登録し直す必要があります。あるいは以前に登録した内容を呼び出すなどをしてパソコンの設定を変更する必要が出てきます。。
そこで、これらの設定を容易に登録、呼び出しができるツールが必要になってきますが、これを可能にしてくれるのがNorton Mobile Essentialsです。実際にこのソフトをインストールしていくつかの設定を登録しておくと、Location ControllerのLocation Change機能よりプルダウンメニューから自分が設定登録したを選択するだけで設定した環境でパソコンが切り替わる様になります。すなわち一度設定してしまえばそれを呼び出すことで簡単に環境が変更できるということです。その上、ディスクトップ上に現れるActive Dial-Up Networkingアイコンをダブルクリックすることで、設定した現在地に最適なアクセスポイントへのダイアルアップネットワークが現れるので、アクセスポイントをいちいちダイアルアップネットワークのグループから探し出す手間も省く事が出来大変便利です。

実践編

筆者は海外では、メールの送受信はもとより、インターネットのWEBを見たり、NIFTY SERVEの会議室を巡回したり、自分のホームページの更新を行ったりしています。
このような欲張りなユーザーにお勧めなのは、ローミングサービスを使ってのPPP接続です。
実際に筆者が行っている方法は、
・BIGLOBEのローミングサービスを使ってiPASS経由PPP接続をする。
・あらかじめ会社に届いたメールをBIGLOBE宛に転送しておき、POPサーバー経由メールを受信する。
・同時にAirclaft98を起動し、telnet経由NIFTY SERVEへログインし、自動巡回でお気に入りの会議室のログを落とす。
・同じようにFTPプログラムを立ち上げ、必要に応じてホームページ用素材をサーバーに転送する
以前は目的によってBIGLOBE、NIFTY SERVEと接続先を変更していましたが、PPP接続で通信を行うことにより、一度の接続でいくつものことができるようになります。

まとめ

数年前、海外にいると日本の情報から取り残され、寂しい思いをすることも多くありました。しかし、近年のインターネットの普及により、日本のニュースサイトをチェックする、メールで連絡をとるなどというように通信ができれば、それこそリアルタイムで情報を入手する事が可能になりました。
海外ではトラブルが起きたときにサポートが得にくいといった面もありますが、是非みなさんも海外モバイラーの楽しい世界を味わってください。

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