月刊モバイルプレス(技術評論社)98年7月号より
私は仕事柄毎月一回位の割合で海外出張があるのですが、ここ数年前までは海外か らの連絡はFAXか国際電話による会話でした。
しかし、電子メールが普及してきた昨今では、海外にいようが国内にいようがお構 いなしにメールが届くので、いやでも海外でも快適に通信が出来てメールぐらい送 れないと格好つかなくなってくるのであります。と言うことで、簡単、快適を目指 した海外通信について考えていきたいと思います。
海外での通信と言うと一昔前までは限られた特別な人が特別な装置を使って特別な 仕掛けで通信していたというイメージがありますが、今では世界的にインフラも整 備され決して特別の分野では無くなってきています。
しかし、通信のノウハウに関する情報は少なく、且つ容易になったとは言え海外と いう環境が生み出す独特の雰囲気や、知識、経験不足から来る不安が敷居を高くし ていることは事実かも知れません。
一方で、海外でも国内同様に自由に通信が行えて電子メールのやりとりやお気に入 りのフォーラム、インターネットのWEBにアクセスできることは、海外での自分 自身の活動範囲を飛躍的に広げることができます。
海外でも国内同様に通信を行うためには最低限、通信端末と回線を用意する必要が あります。従ってこれらを使うにあたり海外と日本とでどの様に環境や状況が違う のか理解しておく必要があります。
海外と言っても国連加盟国だけで100以上の国や地域があり、それら一つ一つを 細かく押さえていくことは不可能ですが、国によって顕著に異なる点の代表は電源 の仕様が違うと言うことです。特に電圧(日本では100V)が国によって115 Vであったり230Vであったりと異なります。この場合日本から持ち込んだ機器 をそのまま海外の電源コンセントに差し込みスイッチを入れると機器にダメージを 与えることになります。
又、電源コンセントの形状も異なる場合もありますので、その場合は日本で使って いるコンセントをそのまま差し込むことはできません。
次にモデムを使って通信を行う場合問題となるのが、電話線への差込口、すなわち モジュラージャックの形状も国によって異なることです。 従って、海外で通信を行う場合は最低限、電源、モジュラージャックの対応を考え なければいけません。
海外からの通信と言うと多くの人は日本にあるアクセスポイントへ国際通話をかけ てつないで通信をしなければいけないと言うイメージを思い浮かべるのではないで しょうか?確かにこれも一つの方法でありますが、それではいかにも通信にかかる 費用が高く、決して合理的とは言えません。現在、国内の多くのメジャーな通信プ ロバイダーはローミングと言われる海外のプロバイダーとの間での接続の相互乗り 入れを行っています。このローミングサービスを活用することで日本へ電話をかけ ることなく自分が滞在している場所の近くのアクセスポイントへつなぐ事により安 い通信費で通信を行うことができますから、わざわざ電話やFAXを使って連絡を 取るより電子メールを活用すれば安く効率的なコミュニケーションが可能になりま す。
海外で日本の機器を使用するうえにおいて必ず覚悟しなければいけないことがあり ます。それはリスクです。多くの機器は国内の決められた条件下での使用に対して メーカーが動作を保証していますが、海外での環境に於いての保証は多くの場合含 まれていません。つまり、海外で誤った使い方をして壊してしまった事に対しては 例え保証期間であっても対象外となるということです。
更に海外で日本の機器を修理、サポートを期待する事は難しいのが現実です。(逆 にそれをビジネスに結びつけている方もいらっしゃいますが)また、こうすれば絶 対大丈夫と言う約束事もなく、強いて言えば”大丈夫の可能性が高い”と言うこと ぐらいです。つまり海外で日本から持ち込んだ機器を使って通信すると言うことは 全て自己の責任に於いて行うと言った心構えが必要です。
海外に物を持ち出す場合は貿易管理令等の法律で規制されており、該当品は事前に 輸出許可を取得する必要があります。しかし、一般に多くの方が使用される32ビッ トのパソコンで、且つ個人使用を目的とした持ち出しはこれらの規制の対象外です。 また、機内へのパソコンの持ち込みで制限されることはまずありません。ただ、た まに搭乗前の手荷物検査場でパソコンの動作確認を求められる場合があります。こ の時は電源を入れ、何らかの画面を表示すれば確認が終わりますのであわてずに対 応しましょう。
一方、機内でのパソコンの使用に当たっては航空会社毎に制限が異なります。ほと んどの航空会社では離陸前の機内放送で機内での使用についての注意事項の説明が ありますので確認しておくことをお薦めします。ただ、これまでの経験では多くの 場合は離着時のシートベルト着用サインが点滅している時以外は機内で使用可能で す。
日本で普段通信に使用しているパソコンや携帯端末はほとんど海外で通信を行う場 合使用可能です。ところがその一方、全く役に立たない物もあります。それは携帯 電話とPHSです。これらは日本の通信環境下でしか使うことができない物ですか ら、わざわざ海外へ持ち出しても何の役にも立ちません。
では最後に必要な機材をまとめてみましょう。
・ノートパソコンなどの通信機器
海外で通信を行う場合、一部日本の場合と異なる通信環境設定が必要になります。
従って、パソコンなど設定を容易に変更できる機器がお薦め。
・モデム
普段使っているモデムカード、或いは内蔵モデム
・モジュラージャックの変換コネクター
日本で使われているRJ11への変換コネクター。
・変圧器
100Vへ変換する変圧器。
・ソケットの変換器
電源コンセントに形状は国によって異なり、その国に合わせた形状のコネクターは 必須。さもないとパソコンの充電が出来ず悲惨な結果に・・・・なります。