2wayスピーカーシステムの自作

 

1.はじめに

 アンプに比べると、スピーカーシステムの自作は非常にとっつきやすいと思います。とにかくユニットを買ってきてプラス・マイナスの端子に線を半田付けし、アンプにつなぎさえすれば、まがりなりにも音は出るのですから。ユニットも安いものなら1本2000円以下で手に入ったりするので、経済的な面でも敷居が低いと言えるでしょう。

 そんなわけで、オーディオを趣味とするようになって以来、スピーカーはずっと自作してきました。市販のスピーカーシステムを買ったことは一度もありません。
 ご他聞に漏れず、私がスピーカーシステム作りにあたって参考にしたのは故長岡鉄男氏の本でした。最初に買った「続オーディオ日曜大工(音楽之友社)」には、密閉型、バスレフ型、バックロードホーンなどの設計方法と図面が載っていて、熱心に読み込んだものです。
 最初に作ったスピーカーシステムは今はなきコーラル8A70というフルレンジユニットを使った大型バスレフでした。その後、長岡氏設計のD-102というフォステクスFE-106Σを使ったブックシェルフ型バックロードを製作し、以来今日に至るまでFEシリーズの10センチのユニットを使ったバックロードを使い通してきました。

 最近、雑誌やインターネットで「ティール・スモール・パラメータ」という言葉をよく見かけるようになりました。いろいろ調べてみると、密閉型やバスレフ型の特性を電気回路(ハイパスフィルター)で近似することができ、振幅だけでなく位相や群遅延も計算することができるものらしいということがわかってきました(まだよくわかっていないので、かなり不正確な表現かと思いますが・・・)。興味を持ってLoudspeaker Design Cookbookという本を買って読んでいますが、なにしろオーディオ関係の洋書を読むのは初めてなのでなかなか骨が折れます。やはり理論の勉強だけでなく作る楽しさも味わいたいと思い、ネット上をいろいろ調べた結果、スピーカーシステム工作のページに載っているVifaのウーファとSeasのツイータを使ったスピーカーシステムにトライしてみることにしました(「プロジェクト」のコーナーにある「3. ULTI 003」というやつです)。

2.材料の入手

 まずはスピーカーユニットですが、アメリカのMadisoundという定評のある店から個人輸入しました。お値段はユニット代が$240.00、送料が$42.82の計$282.82。折悪しくも円安が進行しているため、円に直すと4万円近くになってしまいますね(泣)。
 ユニットは注文してから1週間ほどで到着。


梱包。手前(SEASのツイーター)はしっかりした箱ですが、奥(VIFAのウーファ)はずいぶんとラフな感じ。


SEASの1インチツイーターT25-001。フレームは非常にがっちりした感じです。


VIFAのウーファP17J-00-08。今まで紙のコーンしか使ったことがなかったので、強化ポリコーンの質感が目新しい感じです。ツイーター、ウーファーとも防磁型です。

お次はネットワークのパーツ。コンデンサはASC、抵抗はデールの巻き線抵抗で、海神無線で購入。コイルはトリテックのもの(どんぴしゃりの値のものがなかったので、0.33mHと1.2mHにしました)をコイズミ無線で購入。トータルでは26000円くらいとかなりかかってしまいました。

最後にスピーカーボックスを作るための板材。最近はネット通販でフィンランドバーチ合板とかシナアピトン合板など高品質の板が入手できるようになりましたが、今回はいつもどおり東急ハンズでシナ合板をカットしてもらうことにしました。箱のサイズは約18リットルと小振りなので、板厚21ミリのサブロク板(約180センチ×90センチ)1枚で十分間に合います。


板材。このくらいの量だと会社帰りに持ち帰れます(楽だとは言いませんが)。

3.組み立て(その1)

本式に組み立てる前に、まずは仮に板を組んで箱の形を作り、じっくり眺めて満足感に浸ります(爆)。

満足したところで取りあえずは下ごしらえということで、バスレフポートを作って表板に取り付けます。接着剤は速乾木工用ボンド。釘は使いませんでした。


スピーカーでは空気漏れがあるとまずいので、接着剤は溢れるくらい多めに使います。


表板にバスレフポートを取り付けたところ。

 裏板にケーブルの取り付け。ケーブルは近所で買った電源用コードです。裏板にドリルできちきちの穴を空け、2本に裂いたケーブルを通し、二液型のエポキシ接着剤で空気漏れを防ぎます。

 ツイーターは、ウーファとの前後の位置関係を調整できるよう(タイムアライメント)、別にキャビネット(?)を作ってボックスの上に乗せるようにします。キャビネットは板を4枚張り合わせて作りました。

これで下ごしらえは終了。あとは箱を組み立てて塗装するだけです。

4.組み立て(その2)

次の日の作業は屋外で。前の日は2月にしてはすごく暖かくうららかだったのに、この日は冷たい風が吹きすさぶ状態。はっきり言って日曜大工に適した日とは言い難かったけど、でも早く完成させたい一心でがんばります。


まず側板に表板と裏板を取り付け。木工用接着剤をたっぷり内側にはみ出すくらいつけてから釘打ちします。


もう一方の側板の取り付け。なるべく直角が出るようにしますが、どうしても多少は傾いてしまいます。このとき、あまり長い釘を使っていると修正が容易ではありません。今回は45ミリの釘を使いましたが、もう少し短い方がよかったかも。基本的に釘は「接着剤が乾くまで板を止めておくもの」という考え方でいいと思います。


天板と底板で上下からサンドイッチして箱は完成。2本作るのに要した時間は約2時間。
本当はこの後塗装するのですが、寒さに耐えられなくなり取りやめ。もう少しあったかい季節まで延期することにしました。
箱の中に吸音材(グラスウール)を取り付けます。取りあえず必要最小限ということで、平行する面の片側(計3面)だけにしました。グラスウールは素手でさわるとちくちくするので、ゴム手袋をはめて作業しました。


ネットワークの接続。今まで本格的なネットワークは組んだことがないのでちょっととまどいましたが、とりあえずいろいろ試行錯誤できるようねじ止めで接続しました。


ようやく完成!(塗装はまだだけど)。


とりあえずセッティング。やはり塗装していないので周囲から浮いてます。

5.試聴

音はやや高音寄りのバランスのような。でも高音の質が非常に耳あたりがいいので、とても聞き易いです。
ツイーターのレベルをもう少し下げてもいいのかなあ。ということで、ツイーター側の直列抵抗を2Ωから3.3Ωへ、並列抵抗を10Ωから4.7Ωに変更。アッテネート量は4dBから7dBへと増えるはず。
バランスはよくなったような気がします。ちょっとクロスオーバー付近がへこんでいるから、ウーファ側のコイルの容量を減らしてみようかな(まぁそんな大きな問題でもないけど)。

製作後2日間ほどあれこれ聴いていますが、かなりいい感じ。耳障りな音はせず、かといって鈍い感じでもありません。非常にバランスがよいです。金属系打楽器は心持ちおとなしいというか甘いかな?という気もしますが、これは聞き易さとトレードオフかも。とにかく非常にオーソドックスな音という印象で、余計なことを気にせず音楽に没頭できそうな感じです。
というわけで、当面はいろいろ聴いてみようと思います。

6.クロスオーバー・ネットワークの交換(2005.11.16)

以前、某所でrarakiさんという方(僕にとってこの分野では雲の上にいるような方です)が、クロスオーバー・ネットワークについて、

Linkwitz-Rileyの4th orderがどんなドライバの組み合わせの場合にも比較的馴染みがよく、試行錯誤でクロス オーバを決めるときにはまず最初に試してみるのがよいと思っています。
と書かれていたので、そのうちトライしてみようと思ってました。
このたび、重い腰を上げて、クロスオーバー・ネットワークをLinkwitz-Rileyの4th orderに交換してみたのでレポートします。

まずは構成部品(コンデンサーとコイル)の定数計算です。Loudspeaker Design Cookbookに載っている計算式で計算したところ、以下のような定数になりました。なお、クロスオーバー周波数は約2.1kHzです。

計算値 実際の値
C1 8.03 8
C2 16.05 15+1
C3 21.54 22
C4 4.79 4.7
L1 0.24 0.25
L2 1.07 1
L3 0.80 0.8
L4 0.40 0.39

なお、ウーファーのインピーダンス補正とツイーターのアッテネーターはそのまま流用しました。

次は部品の購入。Madisoundに発注したら、5日くらいで届きましたので、さっそく組んでみました。

音は濁りがなくすっきりクリアでいい感じです。
計算では2.1kクロスですが、テクニクスSH-8000を物置から引っ張り出してきて計ってみたところ、クロス付近がすこし(3dBくらい)へこんでいるような。このくらいは気にする必要ないのかなぁ。それとも、ここからカットアンドトライで詰めていくもんなんでしょうか・・・。

transistor glamourに戻る