パワーアンプの自作

キット製作

 初めて読んだオーディオ関係の本にクリスキットというアンプキットが紹介されているのを見て以来、いつかはアンプを自作してみたいものだと思っていました。
 が、スピーカーの自作に比べると、アンプの自作は遙かに敷居が高いことは否めません。そんなわけで、時折アンプ自作の本を買っては眺めたりしてはいたものの、なかなかアンプの自作に踏み切れませんでした。
 そんなわけで、アンプ自作に手を初めたのは1997年のことです。それまで使っていたメーカー製プリメインアンプが不調になったのを機に、「一丁作ってみるか!」と思い立ちました。
 が、理論もわからず製作技術もないという状態だったので、まずはキットに挑戦することにしました。個人的趣味により「作るなら半導体アンプ!」と思っていたのですが、なかなか半導体アンプのキットは見あたりません(クリスキットは当時すでにフォノ入力がなくなっていたので候補から外れました)。結局三栄無線のオールFETのプリアンプとパワーアンプに決めました。
 作業はすらすらとはかどって、結局土日2日間で出来上がりました。組み立て作業そのものはなかなか楽しかったです。基板に部品をさして一個一個半田付けしていく作業は結構好きかも。

 さて、いよいよ音出しということで、スイッチを入れました。
 ・・・最初に気になったのはハムとトランスのうなり。リスニングポイントでも結構気になる大きさです。
 いろいろCDやらLPやらをとっかえひっかえ聞いてみましたが、印象としては非常にウォームな音だということ。これはこれでなかなか気持ちよく聞ける音だとは思うのですが、いかんせんハムとトランスのうなりが・・・。
 とはいいながらも、日が経つに連れてそんな欠点にも慣れてきたというか、あまり気にならなくなってきて、その後数年の間我が家のシステムの一員として働くことになったのでした。

製作記事のコピー

 キットはあくまでも手始め。一応最終目標は自力で設計できるようになることだと考え、少しずつ本や雑誌記事を読んで勉強を続けていました。が、アンプ設計に必要な知識は質・量ともに半端ではなく、一朝一夕に習得するというわけにはいきません。というわけで、次は製作記事のデッドコピーに挑戦することにしました。まずは現状で不満の多いパワーアンプです。
 製作記事といってもいろいろな人が書いているわけですが、僕はラジオ技術の黒田徹氏の記事を選びました。主な理由は以下の通りです。

 とはいえ、黒田氏の製作記事は80年代中盤頃のものなので、ものによっては部品が入手不可能になっています。特にパワートランジスタは当時のような高fTのものはすでに製造中止です。
 いろいろ検討した結果、ラジオ技術82年9月号掲載の「FET60Wステレオ・パワー・アンプの製作」という記事に白羽の矢を立て、部品集めに取りかかりました。


(出典:黒田徹「FET60Wステレオ・パワー・アンプの製作」ラジオ技術1982.9、ラジオ技術社)

 初段はオペアンプTL071の電源端子から出力を取り出すという変わった回路になっています。出力段は2SK134+2SJ49になっていますが、現在は入手不可能なので、同じ規格でモールド型の2SK1056+2SJ160に変更しました。
 パワーFETのゲートに入っている発振止めの抵抗とパワーFETの入力容量がローパスフィルタを形成して位相回転が大きくなり、NFBで発振しやすくなるとのことで、帰還回路はかなりややこしいものになっています(この辺はまだよく理解できてません・・・)。


(出典:黒田徹「FET60Wステレオ・パワー・アンプの製作」ラジオ技術1982.9、ラジオ技術社)

 電源回路とリレー回路。電源は左右独立の非安定化電源。トランスは記事ではジャンク品(なんと1650円だったらしい)が採用されていますが、当然入手不可能なのでタンゴMG200を使っています(これもタンゴの廃業で入手不能になってしまいました)。またブリッジダイオードもGBPC2504に変更しています。

写真

 ケースはリードCR150。実は底板の強度を増すために前後の縁が上方に出っ張っているのですが、これに電源スイッチが引っかかってしまったので、仕方なく出っ張りを下に向けて取り付けました。これは単にみっともないだけでなく、底板の後ろ側の出っ張りに裏板をねじ止めすることができなくなったため、ピンプラグを抜き差しするたびに裏板がべこべこと波打ちます(泣)。

 裏板は厚さ1ミリのアルミ板で強度的にはいまいち。

 底板を外したところ。配線はちょっと乱雑かな。あと左側のブリッジダイオードに塗った放熱用シリコーンがはみ出してちょっときたならしくなっちゃってます。

 電圧増幅基板。実は初めて自力でパターン書き〜エッチングをやった基板です。最初はレジストペンでパターンを書いたのですが、エッチングするとボロボロになってしまったので、3回くらい作り直しました(最終的にはレジストペンは止めてセラックニスを使いました)。

 天板をはずしたところ。トランスのタンゴは廃業、エルナーのオーディオ用コンデンサも製造中止と、どんどんアンプ用のパーツが手に入りにくい世の中になってきました。

測定

方形波テスト

 f=20kHz,Vo=1Vでテストしました。
 0.33μFをつないだ時にリンギングが出ていますが、これは発振防止用のコイルとの直列共振によるものだそうで、アンプが不安定だということではないようです。 


負荷8Ω

 


負荷8Ω+0.033μF

 


負荷8Ω+0.33μF

 


純容量負荷0.33μF

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